こんにちは!
いろいろとレザークラフトの練習・実験をしており久しぶりの投稿となってしまいました。
今回はその期間に新たに習得した「ビニモの手縫いで表と裏でステッチの色を変える方法」について紹介したいと思います。
手でミシン縫いを再現しステッチの色を変える手法については他の方も情報発信されているのをお見掛けしますが、ビニモではあまり見かけない印象です。
独自のやり方で注意点もありますが、何かのお役に立てば幸いです!
手縫いとミシン縫いの違いについて
表と裏でステッチの色を変えるには、まず手縫いとミシン縫いの仕組みの違いについて理解しておく必要があります。
手縫いの仕組み
このサイトを訪れる方の多くは普段手縫いをされていると思うので改めて紹介する必要はなさそうですが、一応記載させていただきます。
手縫いは1本の糸の両端に針を付け、交互に進めていく「平縫い」が最も一般的です。
簡単な図で申し訳ございませんが、以下のイラストのように左右の糸を交差させて両面を縫い合わせます。
ミシン縫いの仕組み
ミシンは手縫いと異なり、糸を2本使って縫っていきます。
それぞれ「上糸」「下糸」と呼ばれ、以下のような仕組みで両面を縫い合わせます。
上糸は一度革を貫通した後下糸を引っ掛けてまた戻ってくるので、手縫いとは異なり上糸、下糸はそれぞれ反対の面には通ることなく仕上がります。
このため上糸と下糸の色を変えてミシンで縫えば簡単にステッチの色を変えることができます。
手縫いでステッチの色を変える方法
それじゃあミシンを持っていなければステッチの色を変えることができないの?と思われるかもしれませんが、可能ですのでご安心ください。
ただ少し工夫が必要になる方法ですので、あらかじめ準備が必要です。
糸を染色する
まず事前準備として、糸を染色しておく必要があります。
具体的に言うとステッチの色を白と黒にしたい場合、白の糸の半分を黒に染色します。
前述の通り手縫いは1本の糸で縫っていくので、白と黒の半々の糸を1本使えばいい!というわかりやすいやり方です。
用いるのは以下のような「麻糸」と「水溶性染料」です。
以下の注意点がありますのでご注意ください。
①ポリエステル糸は使えない
染色する都合上、ビニモなどポリエステル糸・化繊糸は染めることができないので使用できません。
エスコードなど麻糸を使うことになります。
②綺麗に染めるのは困難
吸水性のある麻糸を染料で染色するため、境目できっちり色を分けるのは難しいです。
マスキングテープなどを巻けば一見綺麗に染め分けることができそうですが、内部にどんどん染料が浸透して広がっていくので、思った位置で綺麗に半々に染めるのは少し苦労するかもしれません。
また染めたい色によっては既成品にちょうどいいカラーがなく、自分で調合を行わなければならない場合もあります。
理想の色にたどり着きそれを好きな時に再現するには、何度も調合を試してレシピを作り、メモを残しておく必要があるでしょう。
ミシン縫いを再現する
糸の準備ができたら、後は手でミシン縫いを再現して縫っていくだけです。
①糸の染色の境目を革の中に隠す
糸の色が切り替わっている部分が外に出ていると格好悪いので、縫い穴の中に隠して見えなくしてしまいましょう。
革が薄い部分の縫い穴だと隠しても見えてしまうこともあるので、できるだけ複数枚革を貼った厚い箇所に隠すのがベターです。
②手でミシン縫いをする
手でのミシン縫いの詳細は次の項で詳しく紹介しますので、ここでは省略させていただきます。
ビニモでステッチの色を変える方法
お待たせいたしました。本題のビニモでミシン縫いする方法です!
ミシン縫いの仕組み自体は手で簡単に再現できますので、問題となるのは上糸・下糸の2本の糸をどのように1本の糸のように扱うかという点です。
この問題に対して私がたどり着いた答えは、2本の糸を繋げて1本にしてしまえばいいんじゃないか?という非常にシンプルなものです。
【写真多め】ビニモ手縫いでステッチの色を変える方法
見本に用いるのはこちらのキャメルの革です。
1mmの革を3枚張り合わせてあり、厚さはおよそ3mmです。
まずこちらをいつも通り菱目打ちや菱ギリで縫い穴を空けます。
次に糸の準備をします。今回は白と黒の糸を準備しました。
使っているのはこちらの「ポリエステルボンド糸」の8番手です。
商品名前は異なりますが、ビニモMBTと同じです。
糸を2色とも適度な長さ(縫う距離のおよそ3倍ほどでいいかと思います)にカットし、中心で方結びにします。
真ん中で結ぶので、十の字のような形になります。
そうしたら4つの針先すべてに針を通します。
針が足りない方は折れた時の予備も兼ねて多めに持っておくといいかもしれません。
針を通せたら、縫い穴の内だいたい真ん中くらいの穴に裏面にしたい方の色の糸を2本とも裏側に通します。
絶対に真ん中である必要はないのですが、特に他のところを選ぶ理由もないので真ん中にしています。
そのまま引っ張って、結び目を革の中に隠します。こちらも結び目を綺麗に隠すために厚めの部位で行うのがベターです。
この後縫製していくことで糸にテンションがかかり解ける可能性は低いですが、念のため丸ギリで結び目に白ボンドを塗布しておくとより安心です。
上から見ると、このように表と裏それぞれで完全に色が分かれることになります。
ここまでできたらいよいよ縫っていきます。
ここからはステッチングポニーを使ったり人によって手を動かす順序が違ったりと細かな手法が分かれそうですが、私の手縫いの仕方で説明させていただきます。
裏側(黒)の糸を1目(今回は向かって左方向)進めます。
通常の平縫いと同じように糸を引き締めます。
そうしたら今通ってきた穴に再び針を通します。
そしてこのくらいの小さな輪ができるくらいまで糸を引っ張ります。
引っ張りすぎると穴から糸が完全に抜けて4つ前の画像の状態まで戻ってしまうのでお気を付けください。
そうしたら先ほど作った黒の小さな輪に白の糸を通します。
そして黒の糸を引き締めると白の糸が引っ張られて縫い穴の中に納まり、以下のように白の縫い目ができます。
このとき糸の交差する箇所が革の中に隠れるよう、糸の引き締め具合を表と裏で上手く調整します。
そうしないと縫い穴からもう一方の糸がチラッと見えて目立ってしまいます。
ちなみに現在裏側もこのように綺麗に1目分の黒のステッチができています。
これで一連の流れは完了で、あとは同じことを繰り返すだけです。すごく簡単じゃないですか?
先ほど省略したエスコードを染めて使う場合も縫い方は同様です。
糸を結ぶ必要がないのと、真ん中から始める必要がないことだけが違いですね。
念のため2穴目も確認してみましょう。
裏(黒)の糸を次の穴から表に持ってきて、裏面の糸を引き締めたら通ってきた穴に再び針を通して小さな輪を作ります。
作った黒の輪に白の糸を通します。
黒の糸を引っ張り白の糸を縫い穴に巻き込んでいきます。
白と黒の引き締め具合を調整しながら糸が重なる部分を上手く革の中に隠します。
ミシン縫いの手順はこれだけです!
この手順を繰り返して最後まで縫い進めると、白一色のステッチが出来上がります。
裏面もしっかり黒のステッチができています。
糸の引き締め具合が均一でなかったのか、ガタついていてお恥ずかしいですが…。
そしてここからは最後の仕上げ、「返し縫い」について紹介します。
とは言っても先ほどの手順と同様なので難しい点はないです。
裏(黒)を1目縫い戻り、
糸が重ならないように引き締めます。
そうしたら今通ってきた穴に再び針を通して小さな輪を作ります。
針を通した時にせっかく重ならないように揃えた裏側の黒の糸の並びを崩してしまわないようにご注意ください。
そして黒の輪に白の糸を通して
糸を引き締め白の糸を引き込みます。
繰り返しになりますが革の交差部分を革の中に隠すこと、白の糸が重ならず綺麗に並ぶようにする点にご注意ください。
これを2~3目ほど繰り返して、いつもの平縫いと同じように白ボンドもしくはライターでの焼き止めなどで糸を処理します。
左側が完成しましたら右も全く同じように縫い、返し縫いと糸の処理が終われば完成です。
以下のように表が白、裏が黒と、手縫いでステッチの色を変えることができました。
ちなみに参考として、同じく白と黒の糸を結んで真ん中の穴に通し、平縫いを行ったものが以下となります。
平縫いとミシン縫いの糸の動き方が異なることがお分かりいただけるかと思います。
注意点
ビニモでの手動ミシン縫いの手法を紹介しましたが、いくつか注意点もありますのでお気を付けください。
糸の処理箇所が増える
通常1本の糸での平縫いならば糸を切って処理する箇所は1箇所だけですが、この手法だと左右の2か所で糸の処理をすることになります。
処理した箇所はどうしても耐久性が劣ってしまいますので、なるべくカードポケットなどの負荷のかかる箇所と重ならないようにした方がよいでしょう。
途中で返し縫いができない
例えば以下の赤丸箇所のように、縫い進めていく途中で負荷がかかる部分があれば補強のため返し縫いをするケースが多いと思います。
残念ながら今回の手法ではこのような途中での返し縫いはできません(もしかしたら工夫次第で可能かもしれませんが、私はそこまで辿り着けていないです…)。
そのため別の形で何らかの補強をするのもひとつの手です。
普段斜め漉き等で革の厚みを落としているのであれば薄くしすぎない(コバが厚くなってしまうデメリットもありますが)、別途補強材を使うなどです。
私は以下のセラフィーニテープという補強材を愛用しています。
使いやすく伸び止め効果も高いので持っていて損はないと思います!
まとめ
今回ビニモ手縫いでのミシン縫い再現方法についてご紹介させていただきましたが、恐らくもっといい方法もあるのではと思います。
ただこうやってチャレンジして新しい手法を探していくのはすごく大切なことなので、今後も継続して挑戦と皆さまへの共有をしていきたいと思います!
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